英国情報

Vol.45

英国豪華列車
-ブリティッシュ・プルマンの旅-

DAKS2018年秋冬コレクションのキーワードは「旅」。英国独特の伝統的な旅の美学、古き良き時代の列車の旅が醸す贅沢な趣が、モダンなコレクションの根底にあります。高級感のある素材、DAKSお馴染みのハウスチェック柄など、伝統の深みを、さりげなくカジュアルにまとめ、着る人に素敵なライフスタイルを誘います。

 

 

豪華列車ブリティッシュ・プルマンに乗り、週末に向けてロンドンを後にする男女二人の出逢いが2018年秋冬コレクションのインスピレーション源になっており、冬らしくリッチでロマンチックな色をメインにコレクションは構成されています。車窓から見える豊かな英国の田園風景、新たな出会い、瀟洒な歴史的建物など、旅の魅力が満載されたコレクションは、DAKSの個性と気品に溢れています。

 

 

STORY 1 – 古き良きイギリスに出会うブリティッシュ・プルマンの旅

 

 

イギリスでの鉄道の旅と聞いて、誰もが思い浮かべるのが「ブリティッシュ・プルマン」。1940年代の鉄道黄金期を代表する列車で、クリスタルのライト、寄木細工の車体、モザイクタイルの床など、アール・ヌーヴォーの粋を凝らしたデザインが実に優雅。

 

 

各車両には「シグナス」「フェニックス」「ベラ」などの名前が付けられており、それぞれが異なる内装と歴史を持っています。たとえば「シグナス」はチャーチル元首相ゆかりの車両、「フェニックス」はクイーン・マザーが愛した王室用の車両で、フランスのド・ゴール大統領も乗車したそうです。

 

 

また、現在公開されているDAKS 2018年秋冬のシーズンビジュアルの撮影にもこの「フェニックス」の車両が使用されました。温かみのあるベージュに荘厳なブラウンで彩られたそのクラシックな車両はDAKSのハウスチェックの色合いとも調和し、まるで車両もコーディネイトの一部に組み込まれたかのような印象を受けます。気品ある車両のその堂々とした佇まいは長い間多くの人に愛されてきました。

 

 

プルマンは、世紀をまたいで紳士淑女を運び続け、オリエント急行のイギリス側の走者を務めました。しかし、1970年代、空の旅の台頭とともに鉄道の旅の人気は衰え、車両は世界中に離散してしまいました。これを憂いたのが現在の運営会社であるベルモンド社。時間をかけて一台一台買い戻しては修理し、昔日の列車の瀟洒な姿を復元、新たな命を吹き込んだのです。今では世界中の鉄道ファンが「レトロな鉄道の旅をもう一度」と、その人気は再燃、運行数は年間145本に上り、のどかな田園風景が楽しめる半日周遊コースからイギリス各地へのツアーまで目的地もさまざまです。

 

 

発着駅はロンドン中心にあるヴィクトリア駅、昼下がりのホームに11両編成のプルマンが滑るようにホームに入場。乗客たちは決まって優雅な車体に見とれ、機関車がはく、懐かしい蒸気の香りを愛おしみます。

 

車両に乗り込むと、ウエイターが丁寧に席に案内してくれます。そこはアール・ヌーヴォーの世界です。「マダム、いかがですか?」と言いながら注がれるウエルカム・シャンパンがグラスの中で激しく泡立つと、哀愁を誘うプルマンの汽笛が鳴り、やがて、列車は昔日へ向かって、ゆっくりと滑り出すのです。

 

 

 

 

STORY 2 – ジョージアンの優雅な町並み、世界遺産都市バースへ

 

 

ロンドンから西に100マイル、優雅な佇まいのジョージアン・タウン「バース」は世界遺産に登録されています。バースの名はbath(浴槽)の語源とも言われますが、実はローマ時代にローマ人の手によって開かれた温泉地で、現在もローマ浴場跡(ローマン・バス)が街の中心に残っています。その付近にはアフタヌーンティーなどが楽しめるパンプルーム、荘厳な大修道院、魅惑的な博物館なども。また、ロイヤル・クレセントと呼ばれる、三日月型に連なって並ぶジョージアン様式の建造物もバースのシンボルのひとつです。この地方独特の蜂蜜色の石で造られた市内の街並みは実にエレガント。DAKSのコレクションは、そんな街並みを背景とする素敵なウィークエンド・ウエアを提案。コンテンポラリーな配色の軽い秋冬素材を駆使したモダン・エレガンスを演出します。

 

 

 

 

STORY 3 – ハート・オブ・イングランドで出会うクリスマス・マーケット

 

次に訪れるのは、ハート・オブ・イングランドと呼ばれる中部イングランド屈指のカントリーハウス「チャッツワース・ハウス」。なだらかな丘の上に建つ館の周囲には11月後半からクリスマスの市が建ち、クリスマス・ショッピングを楽しむ人で賑わいます。

 

チャッツワース・ハウスは代々のデヴォンシャー公爵の住まいですが、公爵の家系は美術品コレクターとしても有名で、館内も貴重な壁画や絵画、家具や蔵書コレクションであふれています。中でも大理石の彫刻コレクションで知られるギャラリーは、ジェーン・オースティンの小説『プライドと偏見』のロケ地となり一躍有名になりました。

 

しかし、絵画よりも美しいのは夕方の館の様相です。丘の上に立つ城のような館、無数にある窓という窓が金で縁取りされているため、沈み行く夕陽にキラキラと映えるのです。すぐ前の小川のほとりでは、羊飼いが1日の終わりに、群れをゆっくりと追っている姿も。まるで中世の絵画そのものを見るかのよう。陽が沈むのを合図に、やがて館では晩餐会が始まります。紳士淑女達は、カジュアルな外出着からフォーマル・ウエアに着替えて出席。チャッツワース・ハウスのゴージャスなダイニング・ルームに似合った装いこそ、DAKSが目指す英国の魅力と個性を取り入れたオケージョンウェアです。

 

 

 

Text by Yuko Yamagata

Photo by YAYOI