英国情報
Vol.44
英国の伝統 -メンバーズクラブ-
イギリスでは、伝統でもあるメンバーズクラブが今もなお人気を博しています。
メンバーズクラブは「会員制クラブ」のことで、日本では多くの人が高級ホステスのクラブを連想するのではないでしょうか。
しかし、イギリスでは少し意味合いが異なり、バーやレストラン、ジムや屋上スイミングプールなどを擁したラグジュアリーな施設のことを指します。
メンバーズクラブの歴史
クラブの発祥は17世紀のコーヒー・ハウスと言われています。コーヒー1杯1ペニー(約1円)を支払えば
誰でも自由に入ることができ、そこでは商売の話や政治談議、新聞や雑誌を読みふける人々で賑わっていました。
ただし当時は、女性禁制で男性だけの世界で優雅な時間を楽しんだそうです。
当時のクラブや紳士的社交の雰囲気を伝えるイラスト
(画像=https://sitsuji.ashrose.net/archives/636)
やがて同じ趣味のメンバーが集う場となり、18世紀後半から会員制のクラブ・ハウスが誕生しました。
ロンドンから500マイル以上の旅をしたことがある者が集う“トラベラーズ・クラブ”や、
化学・文学・芸術分野で活躍している者とそのパトロンが集う“アシニーアム・クラブ”などが有名です。
それぞれ豪華な邸宅がクラブとして使われ、団欒や談議だけでなく食事や飲酒、宿泊など
会員メンバーは我が家のように過ごすことができました。
社交場以外にも、乗馬やゴルフのクラブもありました。
(画像=https://sitsuji.ashrose.net/archives/636)
イギリスのクラブは紳士の社交場というだけあり、誰でも入会できるというわけではありません。
ある有名クラブでは年会費が100万円ほど必要だったそうです。
しかし、裕福というだけでは入会できず、会員メンバーから紹介されたのちメンバー全員の承諾を得て、
晴れて一員になれるのです。また、豪華な邸宅を自由に使用できる代わりに、クラブごとの規制も多く、
飲食物の持ち出しやペットの入室は厳禁で、メンバー以外の部外者と会うときは専用の部屋を使用しなければなりません。
気心の知れた紳士同士だけの排他的な場所だったのです。
世界中で有名な映画「007 ドクター・ノオ」では、ロンドンの高級カジノ“アンバサダー・クラブ”が
主人公ジェームズ・ボンドの初登場シーンの舞台となっています。
クラブのその厳格さから、スパイ小説や映画などで秘密情報部の密会場所として多く描かれています。
ロンドンで最も古いクラブは、1693年に誕生した「ホワイツ」という排他的な紳士クラブです。
イタリアからの移民フランシスコ・ブランコが経営していたホットチョコレート屋をクラブに作り替えたことが始まりで、
苗字のブランコが「白」を意味することから「ホワイツ」と名付けられました。
当時、王族または非常に強力な地位にあるもののみが会員となることを許され、そこではスポーツや政治的な内容で賭け事が行われていたそうです。
キャメロン元首相が所属していたことでも広く知られ、今も顧客に支持されています。
1970年代以降は、クラブによって女性も入会できるようになりましたが、女性メンバーは入れる部屋が限られていたり、
参加できる曜日が決まっていたりと、紳士の社交場としてのイメージが根強く、女性には敷居の高い世界でした。
変わりゆくメンバーズクラブ
かつて富裕層にしか手が届かなかったメンバーズクラブですが、近年では、アートやメディア関係の
若い人々を積極的に会員として受け入れ、感度の高い人たちが集まって交流する場を提供するという方針に変わっています。
また、多くの人を受け入れることにより会費はなるべく低く抑えられています。
その代表的なメンバーズクラブが“ソーホー・ハウス“です。クリエイティブ分野に関わる人達が集まれる場所として、
1995年にロンドンのソーホーにオープンしてから瞬く間に人気は広まり、ロンドンだけでもグループで6軒運営されています。
その他、ニューヨークやマイアミ、ロサンゼルス、ベルリン、イスタンブールなどグローバルに展開されています。
正面から見たソーホー・ハウス(英国)
また、近年では男性禁制の女性専用クラブも設立されるなど、時代の流れに乗ってクラブの在り方も変わりつつあります。
朝から晩まで食事やお酒を楽しめるのはもちろんのこと、Wi-Fiも完備されているので
日中は一人で仕事をしたり、打ち合せに使用したりすることができます。
夜は友人やクライアントを招き、有名インテリアデザイナーが手掛けたエクスクルーシブな空間で
楽しい時間を過ごすことができるのも魅力です。
メンバーになるためには、既存メンバーの推薦を受け、推薦状にメンバーのサインを得た後に
職種などの審査が必要となっており、メンバーズクラブ誕生当時から変わらず、
紳士淑女の社交場としての厳格さを今も保ち続けています。
DAKSメンズウェア・クラブ
ロンドンのオールド・ボンド・ストリートに位置するDAKSの旗艦店オールド・ボンドショップ2階では、
2016年4月に紳士ショップ「メンズウェア・クラブ」がオープンしました。
1階ではウィメンズウェアとメンズのカジュアルウェアを展開しているのに対し、
2階ではメンズのフォーマルウェアを中心に、メンバーズクラブでもご着用いただけるような最適な装いを数多く取り揃えております。
DAKSの創業者であるシメオン・シンプソンがこだわり続けた高品質の既製服だけでなく、
あらゆるお客様のニーズに対応したオーダースーツの展開も行っており、その時々のオケージョンに最適なウェアを提案いたしております。
またここではDAKS同様、英国王室御用達認定書を授与されているブランドを多数取り扱っており、
靴では「Tricker’s」、帽子では「Lock&Co.Hatters」、香水では「Floris」、さらにエナメル細工の英国伝統工芸品
「Halcyon Days」まで、お客様のライフスタイルをトータルに提案し、紳士だけの特別な時間をお過ごしいただけます。
また、DAKSでは「Tricker’s」や「Halcyon Days」とコラボし、商品開発を行っています。
ロイヤルウォラントを授与されているブランド同士がコラボし開発された商品は、厳選された素材を使用し、
一流の職人により1点1点丁寧に作られた商品として日本でも大変好評を博しました。
そして今年は、英国王室御用達認定書を授与されている傘ブランド「Fulton」とコラボし、
代表的であるバードケージにDAKSの象徴であるハウスチェックを掛け合わせた商品を開発いたしました。
エリザベス女王ご愛用の傘として知られている「Fulton」の傘はデザインだけでなく、優れた機能性も世界中から評価を得ています。
「Fulton」とのコラボ商品は、現在数量限定でDAKS公式オンラインショップ上でも展開されておりますので、是非ご覧ください。
ロンドンへ旅立つ機会があれば、一度オールド・ボンドショップにある「メンズウェア・クラブ」に立ち寄り、
モダンと伝統の調和により造り出された心地よい空間でくつろぎながら、
英国を代表するブランド同士が作り出す贅沢な雰囲気を堪能するべく、是非お立ち寄りください。