英国情報

Vol.40

エリザベス女王のお気に入り
~王室御用達の紋章を探してロンドンを歩く~ 特別編 ロイヤル・ウィンザー・ホース・ショー体験記

2016年6月12日、イギリスの「The Mall」の並木道にはおびただしい数のテーブルが並びユニオンジャックがはためきました。エリザベス女王90歳の誕生日をお祝いする巨大なストリートパーティー「ザ・パトロンズ・ランチ」が開かれたのです。パーティーには1万人以上の方が参加し、シャンパングラスを片手にエリザベス女王を祝福します。

公式の誕生日式典は毎年6月に行われますが、エリザベス女王の実際の誕生日は4月です。今回の英国情報では毎年行われる「ロイヤル・ウィンザー・ホース・ショー」、そしてエリザベス女王90歳を記念して5月15日に開催された最大のイベント「The Queen’s 90th Birthday Celebration」を紹介します。その前に、エリザベス女王について少しお話をしましょう。

 

ロイヤル・ウィンザー・ホース・ショーはロンドン郊外ウィンザー城が舞台。

1921年4月21日、午前2時40分、ロンドンのメイフェア地区ブルートン通り17番地で、一人の女の赤ちゃんが産声をあげました。この家は赤ちゃんのママのお爺様の家で、ベビーの名前は、エリザベス・アレクサンドラ・メアリー・ウィンザー。そう、エリザベス女王のことです。ママにちなんで付けられたこの名前を、幼少のエリザベスは、発音することができず、舌足らずの口ぶりで自らを「リリベット」と名乗ったそうです。そして、今でも女王の親しい取り巻きは、彼女のことを、リリベットと呼ぶようです。

小さなリリベットは、2つの大戦をくぐり抜け、やがては1952年に即位し、英国の女王の座に着きました。そして昨年9月、曽祖母のヴィクトリア女王の記録的な統治期間をついに追い越し、英国史はじまって以来、最長統治者としての記録を、今も日々更新しています。去る4月21日に90歳、卒寿を迎えられた女王様、その誕生祝いは約1ヶ月遅れの5月15日、ウィンザー城に隣接した馬場で催されるロイヤル・ウィンザー・ホース・ショーの最終日が舞台となったのです。

 

会場内にはDAKSのブースが設けられました

 

ホース・ショーのパトロン(後援者)はエリザベス女王。エジンバラ公とともに大の乗馬好きで知られます。

1943年から続くという伝統あるホース・ショーは、テムズ川の流れが初夏の日差しにキラキラと輝き、ピンクと白のメイフラワーが新緑に映えて満開になる5月に、毎年5日間にわたって開催されます。初代パトロンは女王のお父様故ジョージ六世でした。父君が亡くなった後は、もちろん女王がパトロンを引き継いでいます。ショー・ジャンピングはもちろん、馬を美しく運動させるドレサージュという競技、小型馬車を走らせるドライビングなど、約150に上る種目で競われます。きりりとした乗馬服に身を包んだ紳士淑女が、絹のように滑らかな毛並みのサラブレッドたちと一体になって技を競い合う姿は、まさにブリティッシュ・エレガンスの粋と言えます。

数ある種目の中で、女王と夫エジンバラ公が毎年とても楽しみにしているのが、最終日に開かれる全英子供乗馬クラブ「ポニークラブ」の決勝戦です。ウィンザーのホース・ショーにポニークラブの競技が加わったのは今から37年前、それを可能にしたのは女王、エジンバラ公、チャールズ皇太子の3人から王室御用達を承っているDAKSです。ウィンザー・ホースショーにおけるポニークラブのスポンサーシップは当時のDAKS会長レオナルド・シンプソン氏の尽力ではじまりました。今ではDAKSとの関係について「乗馬に関するスポンサーシップでは、DAKSは最も長く続いている特別なパートナーシップなのです」(ポニークラブ会長メアリー・タケット氏)と高い評価を得ています。

 

全英から選び抜かれた30人が集いました。未来の乗馬界を担う精鋭ばかり。

それだけではありません。DAKSの長期的な視野に基づく支援が奏功し、ポニークラブの決勝戦は、今では全英ジュニアの馬術選手育成の頂点となりました。女王の令嬢アン妃は小さいころはポニークラブのメンバーでした。そしてアン妃の令嬢ザーラ・フィリップスもポニークラブで乗馬に親しみ、前回のロンドン・オリンピックではメダル獲得を果たしました。この日の決勝戦に出場した30人の子供たちの中から将来のメダリストが出たとしても不思議ではないのです。

 

5つのチームに分かれて競技に励みます。

この30人の子供たちは、全国を網羅する約5万人のメンバーを誇るポニークラブのネットワーク戦を勝ち抜いて来た精鋭ばかり。ウェールズ、イングランド、スコットランド、アイルランド共和国、北アイルランドを代表する5つのチームに分かれて技を競い合います。チームごとにウェールズ=赤、イングランド=白、スコットランド=紺、アイルランド共和国=緑、北アイルランド=黄色という具合に、色違いのトレーナーを着て各種競技に臨みます。全速力で走るポニーを操る子供たちの姿を目の当たりにすれば、見る方は誰もが自分の子供が出場しているかのように熱く声援を送るのです。

 

DAKSロゴの入った袋を使った競技。

競技の内容も障害物競争のようなユーモアたっぷりのものばかり。馬上から槍で、並んでいる風船を割りながら走り抜けたり、アルファベットが大書された積み木を拾い、DAKSと読めるように重ねていく等々。今年はリードしていたウェールズをイングランドがぐんぐんと追い上げ、ついに逆転勝ち。優勝杯「プリンス・フィリップス・カップ」を渡されたのは、もちろん矍鑠たる今年95歳を迎えるエジンバラ公でした。

 

逆転勝利で優勝を果たしたイングランドチーム。

ポニークラブの素晴らしさは勝ち負けだけではありません。馬の世話や小屋の掃除等を通じて、集中力や責任感が養われます。90歳を迎えられてもお元気で、どんな時も奥ゆかしく自己コントロールを維持なさるエリザベス女王もまた、常に馬を愛し、馬術から多くを学ばれたのではないでしょうか。

 

会場はエリザベス女王90歳の祝賀モードに包まれていました。

ロイヤル・ウィンザー・ホースショーの最終日は素晴らしい天気に恵まれました。夜9時、さきほどまで馬の競技で賑わっていたアリーナの土はきれいに整備され、いよいよ女王のお誕生日祝賀イベント「The Queen’s 90th Birthday Celebration」が始まります。舞台の上ではロイヤル・マリンのブラスバンドがミュージカル「マイ・フェア・レディ」の曲を軽快に演奏中です。テレビ・プレゼンターのアント&デックがタレントのマーティン・クルーと共に、女王の人生の3つの重要なポイント、すなわち「軍隊」「英連邦」そして「乗馬」を説明し、ショーにはこの3つが満載されていることを予告します。すると、レンジローバーが静かに入場。中からはチャールズ皇太子とカミラ夫人がお出ましになりました。

続いておもちゃの兵隊さんのような騎馬隊に守られながら1台の雅やかな馬車が黒光りする馬に引かれて到着。シンデレラの舞踏会が始まるような趣です。馬車の中からは、アジサイ花の薄いブルーにも似たドレスに、お揃いのハットをお召しになった女王、ブラックタイのエジンバラ公が降り立たれました。そして、全員で国歌斉唱です。

ショーの冒頭では女王の足跡をたどる「エリザベス・ストーリー」が演じられました。幼少の女王を演じたのは、ポニークラブのメンバーで、13歳のキンヴァラ・ガーナーちゃん。このほか、第二次大戦終戦直後のストリートパーティーの様子や戴冠式時に使われた豪華な馬車が登場するなど、これまでの歩みが走馬灯のように展開されました。

 

そして、真っ赤なジャケットに身を固めた騎馬隊によるショーが続きます。国内の軍隊行進のほかにオーストラリア、ニュージーランド、フィージー、カナダなど、コモンウェルス諸国の鼓笛隊などが、整然とした行進を披露。ショーに登場した馬の頭数は全部で900頭。出演者数はタレントやライダーたちを合わせて1500人以上に上りました。

 

オフホワイトのブランケットはロイヤルファミリーに、
ハウスチェックのブランケットはロイヤルボックスのVIP席に配られました。

 

ふと見ると夜の帳はすっかり落ちて、冷たい夜気が観客席に忍び寄ります。女王はオフホワイトに紫色のロゴマークが入ったDAKSのブランケットをそっと膝の上に広げられました。すべてのVIP席に提供されたDAKSハウスチェックのブランケットも、人々の膝の上に掲げられました。と、祝賀の空砲が打たれ、人々のどよめき声も響きわたります。そして花火が上がり、最後のフィナーレでは巨大なバースデーケーキの巨大なキャンドルに火が付き、会場の人々が声をひとつに合わせて「ハッピーバースデー、マジェスティー!」を歌います。

若くして女王になられたエリザベスという一人の女性、その90年間の歩みとは、想像を絶するものに違いありません。若き日の女王は、国民にこう誓いました。「私は、国に仕える」と。多くの英国人は「彼女はその言葉をこれまでよく守った」と高く評価しています。女王様、万歳! 万歳、リリベット!

取材:山形優子フットマン 写真:富岡秀次
※一部写真はイベントオフィシャルフォトグラファーより提供

 

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